今週の発達障害関連ニュース(2017/12/17-12/23)

発達障害に関する今週のニュースをまとめました。

目次

事件・事故

▶小二男児が職員を殴打

今年の5月、小学2年生の男子が野球バットで職員を殴ったことが分かりました。
女性は後遺症が残り、男子児童は児童相談所に通告されました。

神戸市によると、男子児童は、軽度の発達障害があり、当日は、野球ができないことに不満を感じていたという。
小2がバットで職員の頭部を殴打(FNN)

「発達障害」という事実を公表したのは、どのような文脈・意図だったのでしょうか。
「発達障害だから凶暴だ」というレッテル貼りならとんでもありません。
「発達障害だから動機はわからない」ということであれば、原因究明を放棄するための言い訳です。「発達障害者は何をしでかすか分からない」というレッテル貼りにもつながります。
気になるところです。

▶冤罪だった?12年間服役した発達障害者に再審決定

2003年、入院患者を殺した罪で、看護助手の女性が12年の懲役判決を受けました。
女性は服役し、刑期を終えて出所しました。

しかし今回、大阪高裁は、自然死だったかもしれないとして再審決定を下しました。

服役した女性は、自分が殺したと自白していたようです。
本当に無罪の人なら自白することなどありえるのでしょうか?
このように報道されています。

自然死であるなら、なぜ、殺害を自白したのか。
(中略)
○○さんは後に、精神科医による発達・知能検査で軽度知的障害と発達障害の傾向が判明する。つまり、防御する力が弱い「供述弱者」だったのである。大阪高裁も今回の決定で「警察官、検察官の誘導があり、それに迎合して供述した」可能性を指摘している。
虚偽供述を誘導し、自然死を殺人事件に仕立ててしまったのか。
再審へ 「自白」経緯を検証せよ(中日新聞)

他にも多数のメディアが取り上げています。
元看護助手の女性に裁判のやり直しを決定(MBS)
呼吸器事件 原則踏まえた再審判断(信毎Web)
12月22日付  滋賀・患者死亡  自白偏重戒める再審決定 (徳島新聞)

行政・法律関連

▶国会での障害者差別禁止 義務づけへ意見書

国会での障害者差別禁止を義務づける法律を求めて、日弁連が意見を出します。

日本弁護士連合会が、国会における障害者差別を禁じる法令を制定するよう求める意見書の取りまとめに着手した。現行の障害者差別解消法では、内閣に置かれた行政機関や地方議会を含む自治体などが適用の対象とされるが、三権分立を踏まえて国会は対象外になっている。
障害者差別禁止「国会も」 法制化促す 意見書公表へ(毎日新聞)

事の発端は昨年のこんな事件です。

国会がALS患者を参考人招致しようとしました。その人は難病の症状で発話が難しく、コミュニケーションに通訳人を使っていました。しかし国会は、審議時間が長くなることを理由として、その人の出席を断ってしまったというものです。

この事件は話題になり、ニュースになっています。

>>『国会審議にALS患者の出席拒否』の真相と本質的な問題点(ハフィントンポスト)

 

「合理的配慮」の提供を義務づければこういったことは無くなります。

今の制度では、行政機関は合理的配慮の提供が義務とされています。市役所・区役所などは、このような対応をしてはいけないということです。もしやってしまったら違法です。

しかし国会と裁判所では、「三権分立の観点」を理由に義務化されておらず、こういったことが野放しにされています。今回の意見書作成はこれを問題視したものです。

今後の進展に期待しましょう。

医療関係

▶ADHDのビデオゲーム型治療法AKL-T01開発

開発中のADHD治療法「AKL-T01」の臨床実験の結果が発表されました。

効き目はあるということのようです。

ADHDと診断された小児および若年患者348名を対象としたランダム比較試験において、AKL-T01はアクティブコントロールグループとの比較で、予め規定された主要評価項目におけるTOVA®(Test of Variables of Attention)による総合スコアであるAttention Performance Index(API)の変化で、統計的に有意な改善を示しました

Akili、小児ADHDのピボタル試験において主要有効性エンドポイントを達成

AKL-T01は、「デジタルメディスン」と呼ばれる新しい形の薬です。訳すと「電子的治療薬」。

その服用方法は、なんとビデオゲームをプレイすること。AKL-T01が組み込まれたゲームをプレイすることで前頭前野に効果が及ぶようです。

開発会社であるAkili Interactiveは、今後、AKL-T01の発売に向けてFDAへの申請を行うそうです。日本で発売されるのはいつになるのでしょう。楽しみです。

今週のカムアウト

▶柳家花緑さんが発達障害を公表

21日放送の「とくダネ!」は発達障害の特集。今年8月に出版した書籍で発達障害を告白した柳家花緑さんが出演して、ご自分の経験を語りました。

「僕は人に喜ばれる落語もやりたいし、そういう存在になりたいと思っているんで、正直でいる方が人に喜ばれるんじゃないかっていう思いが強くて、たぶんそういう欲求から、こういうもの(発達障害)を世に知ってもらおうという気持ちになったんだと思う」と告白を決意した経緯を明かした。柳家花緑、発達障害告白で「生きるのがすごく楽に」(日刊スポーツ)

40歳を過ぎて発達障害という診断を受け「救われた。病気のレッテルを貼られたおかげで全部自分で背負い込まなくていいと。吉報だった」と述懐。柳家花緑、発達障害公表で「今の方が圧倒的に自分らしい」(デイリー)

NHKのアラビア語会話で、花緑さんのお姿はよく見ていました。発達障害だったのですね。驚きです。

有名な方がこうやって公表してくれるのはありがたい。我々当事者にとっては勇気がでますし、定型の方も「発達障害は普通のことなんだな」と思ってくれるでしょう。ありがとうございます。

今年8月に出版されたのはこちら。

「スピリチュアル風味」ってなんだw

地域のニュース

▶滋賀県と塩野義製薬が発達障害児支援へ提携

滋賀県と塩野義製薬が、発達障害に特化した子どもの支援のための連携協定を結ぶそうです。

自閉症やアスペルガー症候群など発達障害のある子どもらを支援するため、県と塩野義製薬(大阪市)が事業連携協定の締結に向けて協議を進めていることが、関係者への取材で分かった。

発達障害児、支援へ 県と塩野義、連携協定目指す(中日新聞)

全国の公立小中学生の6.5%60万人に発達障害の可能性がある一方、支援を受けているのは約半数という現状があります。これを解決するために、事業協定に基づき啓発活動、研修や保護者支援などを展開することを検討しているとのこと。

▶高専で発達障害者のための職業訓練科を開設 京都

京都府の福知山高等技術専門学校が、発達障害の生徒を対象とした「キャリアプログラム科」をスタートさせました。
プログラムは6ヶ月間。

定員5人に対し多くの応募があり、第一期生として19~35歳の男性が入学したそう。

ある日の訓練では、机を向かい合わせて「なぜ職場でトラブルになったのか」について意見交換。信頼し合える場だという安心感から、本音が次々飛び出し、失敗の本質が見えてきた。当人にはつらく耐え難かった行為が、周囲の人にとっては「打ち解けるため」の親切心だった事例も浮き彫りになり、「今度そういう場面になったら、どういう反応をするといいのか」を探ったり、無用の摩擦を避けるために事前にしておくことなどが、各自から提案されていった。

発達障害者を職場の戦力に 高技専が新科で訓練(両丹日々新聞 WEB両丹)

すばらしい。

円滑なコミュニケーションのための暗黙知。

これを言語化し、「学びの対象」としてくれたら、きっと役に立つことでしょう。

講演・出版情報

▶アスペルガー少年がコーヒー専門店を立ち上げた経験を出版

元不登校だったアスペルガー少年が、コーヒーへのこだわりを活かして、両親の支援を受けて、コーヒー専門店を開きました。

その経験をまとめた本が2冊同時に出版されます。

岩野さんは周りと自分を比べて卑屈になった時期もあったというが、「特性を生かした仕事を始め、自分が障害者であることが気にならなくなり、堂々と生きられるようになった」と笑顔を見せる。

15歳で焙煎豆店 軌跡明かす2冊 発達障害の岩野さん(桐生)(上毛新聞)

お店の方は人気が殺到。周囲に渋滞が生じたので閉店し、通販と渋谷ヒカリエでの出店に切り替えたとのこと。

本はこちらの2冊です。

▶1月28日 岩野響氏トークセミナー

上記コーヒー少年の出版記念トークセミナーです。

日時 1月28日(日)14:00~16:00
場所 東京都千代田区
事前申込制

詳細情報>>>発達障害のぼくと家族の「生きる道の探しかた」トークセミナー ~岩野響くんが自分にしかできないことを手に入れるまで~著者セミナー・イベント(KADOKAWA)

 

先週の発達障害ニュースはこちら>>>今週の発達障害関連ニュース(2017/12/10-16)

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