約10年ほど前から、オキシトシンの自閉症スペクトラムを和らげる効果がわかり注目されています。
浜松医科大学の山末英典医師は、「将来的にホルモンの一種であるオキシトシンが発のASD治療薬として認可される可能性があります」という。
(中略)
山末医師等はオキシトシンが1回投与、6週間投与のどちらでも内側前頭前野の活動を高め、相手の表情から気持ちを察することができるようになるなど、対人関係の改善に役立つことを確かめた。
出典 週刊朝日平成29年10月20日号「大人の発達障害」
オキシトシンとは
オキシトシンとは、ギリシャ語で「早い」「出産」を語源とし、出産や授乳時に働くホルモンとして知られていました。
脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで、従来は子宮平滑筋収縮作用を介した分娩促進や乳腺の筋線維を収縮させる作用を介した乳汁分泌促進作用が知られていました。
より共同発表:自閉症の新たな治療につながる可能性~世界初 オキシトシン点鼻剤による対人コミュニケーション障害の改善を実証~共同発表:自閉症の新たな治療につながる可能性~世界初 オキシトシン点鼻剤による対人コミュニケーション障害の改善を実証~
愛情を示し示されるスキンシップなどの行動をとることでオキシトシンが分泌されます。
従来、女性だけに存在するホルモンと思われてきましたが、男性にも普遍的に存在するホルモンであることが判明しました。
さらに、自閉症スペクトラムの「目が合わない」「他人の感情が読み取れない」という特徴を改善する効果があるらしいことが分かってきました。
ASDへの効果
オキシトシンを経鼻的に投与すると人への信頼感が増すとのNature 誌への報告を契機として、オキシトシンが人間関係に深く関わっていることが注目された。
http://www.yamaguchi-endocrine.org/pdf/ueta201508.pdf
経鼻投与によって表情から気持ちを読み取れるようになる。
また、オキシトシンが分泌されると利他的な行動をとるようになることが明らかになりました。
表情と感情のパターン認識
ASDは脳の構造と深く結びついた人格ですから、治療するものではありません。
近眼の人がめがねをかけるように、ASD特有の「生きにくさ」を解消する手段を身につけることができるだけです。
ASDは、他人の感情を感じることが苦手です。
表情から相手の気持ちを察する能力を先天的に身につけている定型発達とは異なり、ASDはそれを表情と感情のパターンとして学習する過程が必要なのです。
一度学習してしまえば、定型と同じように振る舞うこともできます。
ASDは、長い年月と苦い失敗を繰り返して、表情と感情のパターンを徐々に学んでいきます。
(だから、ASDの方は若くして死ぬことなく、頑張って生き伸びるべきです。人生経験・対人経験値を増すほど振る舞い方が身について、生きることが楽になるはずですから。)
しかし、もしオキシトシンを服用して他人の感情を読み取れるようになるなら、「表情と感情のパターン」を一気に学ぶことが出来ます。
他人の感情を読み取れる状態になると、
- 楽しい感情と結びつく笑顔とはどんな表情か
- 悲しい感情と結びつく悲しい顔とはどんな表情か
- ○○の感情と結びつく○○な顔とはどんな表情か
を知ることができます。
オキシトシンの血中濃度は10分未満で半減してしまうようですが、作用中に表情と感情の繋がりを一度でも理解できれば、効き目が切れた後にもその学習効果は残ります。
知らない方がいいこともある?
ASDの方がオキシトシンで必ずハッピーになれるとは限りません。
例えば「水が嫌いでお風呂に入らない」人を考えてみましょう。人に不快感を与えていますが本人は全く気づいていなかったとします。
その人がオキシトシンを飲んだとします。
そうすると、本人は初めて「皆、自分が来ると嫌な気持ちになる」ことに気づきます。悲しみ…。
人の気持ちがわからないアスペルガーの方は、自分が嫌われていたり馬鹿にされていても、それに気がついていない場合があります。
「アルジャーノンに花束を」でそんなシーンがありましたね。
しかし、分からなかった感情が分かるようになるのであれば、それは一つの成長ですから、前向きに受け入れるべきなのでしょう。そこから「嫌われない振る舞いをするにはどうすればいいか」を学んでいけばよいのでしょう。
喜怒哀楽はどれも人生の豊かさだと思いますから…。
オキシトシンを使うには
日本国内では販売されていないようです。
アメリカで販売されているオキシトシンの点鼻薬を取り寄せることができます。
以前購入しようとしましたが、当時は人気で売り切れていました。
今はブームが一段落したのか、在庫があるようです。
当時は、「オキシトシンを分泌させるホルモン」の点鼻薬を試しました。なんとなく心が安まる気がしました。プラセボかもしれませんが。
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