ADHDとASD(自閉症スペクトラム)が併発する仕組みが明らかになるかも

ASDのうち、ADHDを併発する人はなんと4~8割もいるそうです。ASDとADHDを併発する仕組みが明らかになりそうだというニュースをご紹介します。

ADHDと自閉症スペクトラム(ASD)の併発メカニズム解明か

和歌山県立医科大学の研究で、ASDとADHDの併発の原因がシナプスの遺伝子異常である可能性が高いことがわかりました。研究班のパワポはこちら

研究内容はマウスを使った実験で、結果は次のとおり。

シナプスの中にあり、自閉症のリスク遺伝子であることが報告されている「キーレル3」を欠損させたマウスをつくり、通常のマウスと比較した。

キーレル3欠損マウスは人間の声に相当する超音波の発声回数が多く、立ち上がったり同じ行動を繰り返す頻度が高いなど、ADHDを合併した自閉症に類似する行動が見られ、発症の新しいメカニズムが明らかになったという。 http://www.wakayamashimpo.co.jp/2018/02/20180201_76667.html

つまり、ASDとADHDを併発する人は、シナプスに特徴があるようです。

アセチルコリンやノルアドレナリンなどの脳内伝達物質を整えるサプリが効くのも納得です。これらはシナプス間で受け渡される物質ですから、何か関連があるのでしょう。ストラテラもノルアドレナリンに作用する薬でしたね。

関連記事>>>平成30年のスマドラ規制でストラテラの個人輸入ができなくなる話

ASDとADHDの併存

ところで自閉症スペクトラムとADHDって両立しないんじゃなかった?

と思われる方もいると思うので、この点に触れておきます。

相反するようでも両立する特徴

一見、ADHDとASDは相容れないように思えます。

  • ADHDは注意の対象が次々と切り替わるけど、ASDはシングルフォーカス
  • ADHDはコミュ力高くカリスマ性あるけど、ASDは一人で淡々とやる

という特徴があります。

文字にしてみると、これが一人の人間に併存するのは不思議な気がします。私もそうですが、我ながら不思議です。

でも実際、両方の特徴をもっています。シングルフォーカスですが次々注意の対象は切り替わります。恋愛に例えると、一途で絶対に浮気はしないけど、すぐに飽きて次の彼氏に移るという感じ。純粋なASDであれば一つに集中して専門家になれるかもしれないのに、ADHDのせいで飽きてばっかり…とADHD傾向がASDの良さを相殺している気もします。(とはいえ両方もってる自分の性格、気に入ってます)

基準が変わって併存診断OKに

従来はADHDとASDの併存診断はできませんでした。しかし2013年に状況が変わりました。

診断基準

お医者さんは、精神疾患を診断する際、「診断基準」というものを参考にします。

診断基準には病名と所見や症状などがまとめられており、「その診断を下すためにはどのような要件を満たせばよいか」が記されています。

日本のお医者さんは、アメリカで用いられている診断基準「DSM」を用います。DSM-4とか5とか耳にすることがありますが、これは医学の進歩に伴いDSMが改定されるたびに付されるバージョン番号です。現在は2013年に出されたDSM-5が最新版。(日本で出たのは翻訳の関係で2014年)

DSM-4

DSM-4では、ASDとADHDは同時に診断できないとされていました。つまりアスペルガーであればADHDの可能性はないし、ADHDであればアスペルガーではないということです。(正確には、両方が疑われる場合は広汎性発達障害(ASDの古い呼び名の一種)を優先するとされていました)

ただ現実には併発している方がいるわけで、そういう良心を持ったお医者さんの中には、両方併存の診断を下す方もいたと聞いています。

DSM-5

これがDSM-5でがらっと変わり、ADHDとASDの診断は併存できることになったのです。

このときの改訂の影響は結構大きく、「アスペルガー症候群(AS)」の診断名は無くなりました。従来の「広汎性発達障害(PDD-NOS)」、「自閉性障害」と併せて「自閉症スペクトラム障害(ASD)」一本となっています。これまで別の疾患だと考えられていたものが、実は全てASDという同じ根に由来しており、程度の差に過ぎないとわかったからです。

また従来は「三つ組みの障害」とよばれる三つの要件が自閉症の要件でしたが、二つに再編されました。「社会性の障害」と「コミュニケーションの障害」が「社会的コミュニケーション障害」にまとめられました。どちらも同じ状態を表すものであって区別ができないからです。

余談(文句)

しかしこの研究を報じる和歌山新報の記事、

「自閉症患者の4~8割がADHDを合併しているといわれ、症状が重篤化し、治療も難しくなるという。」

とか書いていますが、ASDとかADHDに治療という言葉を使うのは違和感しかありません。

紀伊民報も、

「「ADHD」は、落とし物や忘れ物が多い、長時間集中できない「不注意」、教室で着席できないなどの「多動性」、順番を守れない、怒ると乱暴になるなど「衝動性」といった症状がある。」
と、ADHDの説明が酷すぎるような…。カリスマ性がある、行動力があり、アイディアを出す、独創性があるなど、ポジティブな面にも目を向けて欲しいものです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました