【大人の発達障害】ADHD・ASDの私が診断を受けるまでの道のり

もう何年も前のことですが、診断を受けるまでの出来事を記しておこうと思います。
どなたかの参考になれば幸いです。

ADDを自覚する

あるきっかけで発達障害の本を読み、自分はADDだと確信しました。

ADDは、ADHD「注意欠陥多動性障害」に似ていますが、多動性はありません。
ばたばたと動いたり大声で騒いだりせず、教室の中でも目立たないので、
障害の存在に気づかれにくいと言われています。

ただし、頭の中は空想でいっぱい、とっちらかっています。
物事の優先順位をつけることが苦手で、注意の対象があちこちに飛び、集中するべきことに集中できません。

「多動性」が身体ではなく、頭の中にだけ収まっている状態と言えます。

ADDという概念は、子どもの頃から「ちょっと変わった人」でありつづけた自分を、
その枠の中で「典型的な人」として紹介してくれました。
これは初めての経験でした。

自分の発達障害に気づくことを、
「自分の取扱説明書を手にする」と表現された方がおりますが、
まさにそれでした。
もっと自分のことを知りたい、どうすればうまく行くのか(朝起きられるのか、うまく仕事を終わらせられるように、計画的になるのか)知りたい期待感で、とにかく受診してみようと思いました。

 

発達障害者支援センターに電話、そして後悔

「ADHD」「診断」で検索したところ、
「まずは、発達障害者支援センターに連絡をしましょう。
成人の発達障害を診断してくれる病院を紹介してくれます」という情報が出てきました。

うまくいかないエピソード、困っていることなどをノートに書き出して電話しました。
なかなか勇気が出ず、電話するまでに一ヶ月はかかりました。

 

応答した女性はとても事務的な方でした。
本名を聞かれ、学歴を聞かれ、なぜ自分がADHDだと思うのか根拠を聞かれました。
精神的に弱い部分を喋るというのは初めての経験で、ものすごく抵抗感があり、喋りながら電話したことを後悔していました。

 

そんな思いと引き替えに発達障害者支援センターの職員から得た情報は、次のようなことでした。

① 診断を受けても特にいいことはない
② 成人の診断をする病院を紹介することはできる
③ しかしとても混み合っており、1年、2年は待たねばならない
④ 発達障害だと思い込む人が多くて困っている。自助努力をしたらどうか

正直、もう二度と電話するか、と思いました。

※センターの対応は、自治体によって異なるはずです。

 

行き詰まり

大人の発達障害をすぐに診てくれる病院はないと思い込み、診断を受けることはあきらめました。
その代わり、生活の工夫やサプリメントで対処しようとしました。
サプリメントについては、この本を参考にしました。

上巻

下巻

また、サプリを調べるときの辞書として、「ビタミン・バイブル」を手元に置いておきました。

たくさんのサプリメントを試し、それなりに合うものも見つかりました。
ただ、長続きしないのはADDの特徴です。サプリが切れたら購入しないまま、そのうちサプリも飲まなくなり、生活の課題もこなせず、仕事もたまっていくようになりました。

あるとき、公私ともに完全に行き詰まったと感じるときがありました。「これは自力ではどうしようもない。薬に頼るしかない」と考えて、再度、病院を探しました。

 

病院探し

発達障害者支援センターは使えません。自力でインターネットで病院を検索しました。
「地名」「大人の発達障害」「病院」で、出てきた情報を片っ端からチェックしました。
成人の発達障害を診てくれる病院は本当に人気のようで、初診受付日が設定されているところがほとんどでした。

有名どころは数ヶ月先まで予約が埋まっています。
たとえば、昭和大学付属烏山病院。

成人の発達障害の方を対象に診療を行う医療機関が全国的に少なく、全国から当院にお問い合わせをいただいております。
診療枠はできる限り増やして対応しておりますが、受付開始から2時間ほどで予約枠がうまってしまうため、みなさまのご希望に添えない状況が続いております。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

論文を出したり、厚労省の事業をしていたりと、全国的にも有名なところです。
こういう超人気どころはパスします。

成人の発達障害を扱う病院は意外にたくさんあり、
片っ端から電話をかけてみると、3件目で当月中の予約がとれました。

初診日。そこそこ緊張して病院に行きました。
問診票を記入し、それをもとに医者と15分くらいお話しました。
「はじめまして。ADHDかもしれないということだけど、、、」
柔らかい印象のお医者さんで、ほっとしました。

発達障害らしいエピソードをたくさん用意して行きましたが、そこにはあまり触れず、
ADDかどうかはっきりさせるために知能検査を受けることになりました。

 

知能検査とは

受けたのは、いわゆるIQテストです。
子供用はWISC「ウィスク」、大人用はWAIS「ウェイス」といいます。

人の知的能力を、「言語性」と「動作性」に分け、これをさらに下位項目に細分して、それぞれの能力値(平均との乖離)を見ます。

言語性

知識  文化によって獲得した一般知識の程度。(例「ビクトリアの長は誰ですか?」)
理解 抽象的な社会慣習、規則、経験を扱う能力。(例「一石二鳥という諺はどのような意味ですか?」)
算数 数学問題を暗算する集中力。(例「1ドルで45セント切手を何枚買えますか?」)
類似 抽象言語理解。(例「りんごと梨はどのようなところが似ていますか?」)
単語 学習や理解の程度、および語彙の言語表現力。(例「ギターとは何ですか?」)
数唱 注意・集中。(順唱例「1-2-3」、逆唱例「3-2-1」)
語音整列 注意と作動記憶。

 

動作性

絵画完成 視覚的細部を素早く感知する能力。
符号 視覚的-運動協応、運動と心のスピード。
積木模様 空間認知、視覚的抽象処理、問題解決力。
行列推理 非言語的抽象課題解決力、帰納的推理、空間推理。
絵画配列 論理/逐次的推理、社会見識。
記号探し 視覚認知、スピード。
組合せ 視覚分析、統合、組み立て。

の各項目に分かれます。

 

発達障害:能力の劣後ではなく能力の凸凹

多数派はこれらの項目が全て同じような点数になります。
どれか一つだけ突出することはなく、全てできるか、全て平均的か、全て劣るか、
そんな感じになります。

これに対して、これらの項目の点数が、激しくばらつく人がいます。
これが、発達障害と呼ばれるのです。
平均IQは140だけど、短期記憶だけ120だったりします。
例えば、知識は優れているのに手先が不器用でパジャマのボタンをかけられなかったりします。
他の能力が高いので、苦手な部分でも高い期待をかけられますが、それができないので、周囲や自己評価が「やればできるのにやらない怠け者」となります。

普通の人は、「一人の人間は、全ての面で平均的な能力を持っている」という期待・誤解・偏見を抱いています。だから、発達障害を持つ人が、突出して不得意な分野で困っているとき、それをふざけているとか、怠けているからできないなどと誤解したりしてしまいます。

これは、理解不足が生む不幸な誤解です。

 

WAIS-Ⅲ受検

初診から約一月後に前半を受けて、もう一月後に後半を受けました。
長時間かかるので、3時間ずつ2度に分けて受けるという説明でした。

検査はADHD・ASD的なエピソードを語らせる問診と、IQテストでした。

問診は、診断項目に沿って「こんなことはありましたか?」と聞いてくれるので、エピソードをすんなりと思い出し、話せました。人の輪に入れなかったエピソード、人の輪の中で話しすぎてしまったエピソード・・・人生の年月だけたっぷり貯まっています。これまで誰にも話してこなかった自分だけの苦い思い出ですが、ダムから水を放つようにすらすらと言葉に変わりました。

発達障害の診断基準には、「子どもの頃から発達障害の特徴がみられたこと」、というような項目があり、親などを同席させて成育歴の聞き取りを行うことが望ましいようです。ですが、親世代には「障害」という言葉のイメージが悪く、とても理解してもらえないでしょうから、生育歴の聞き取りなしで検査をしてもらいました。

 

もし発達障害ではなかったら?

結果がでるまでとても心配でした。
普通の体を与えられておきながら、普通の人になじめず、普通のパフォーマンスを上げられないとなれば、ただの怠け者・能力なし・偏屈者・性格が悪いだけ・全て自分が悪いということになると思えて仕方なかったからです。

 

WAIS受検から一月半ほどで結果をいただきました。
詳細なレポートが数枚。

結果、動作性と言語性の差はあまりなく、下位検査の一番大きな差は約40。
ばらつきは相当に大きく、堂々と発達障害といえる結果でした。
幸運なことにどの能力も高い水準でした。
詳細な診断結果のレポートを読むと、「なんとなく」苦手と感じていたものが理由を伴ってはっきりと表現されており、心の底から満足しました。診断を受けて良かった。

もし診断を受けるか迷っておられる方、これを読まれていたら、
ぜひ受けてみることをおすすめします。
これまで感じていただろう、もやもやした自責の念、なぜできないんだという重い思いが、すっきりすると思いますから。

関連情報

先延ばしの原因は不安感と対人恐怖かもしれない。

WAISを受けて自分の特徴を把握しておくと、いろんな局面でヒントになります。

 

病院に行く前に。ネットでできるASD・ADHDの自己診断チェックリスト

もしかして発達障害?と感じておられる方、まずチェックリストを試してみては。

共感できるところがどれくらいあるか?という視点で当事者の本を読むのもおすすめです。
ちょっと古いですが、私が当時読んだのはこのあたり。当時はまだ成人の発達障害という概念が日本では今ほど広まっていなかったためか、翻訳の本が多かったみたいです。

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